粗利率とは、売上のうち、売上原価を引いたあとに残る「粗利」の割合です。粗利率の目安は、業種によって大きく違います。中小企業の平均で見ると、卸売業は14.4%、飲食店は63.4%で、4倍以上の差があります。
この記事では、中小企業庁の「中小企業実態基本調査」の最新の数字(令和7年確報、2026年6月公表)から、業種別・規模別の粗利率を計算しました。あわせて、自社の粗利率を平均と比べる前に確かめておきたいことを説明します。
粗利率の計算方法
粗利率は、次の式で計算します。
粗利率 = 粗利 ÷ 売上 × 100 (粗利 = 売上 − 売上原価)
損益計算書では、粗利は「売上総利益」と書かれています。粗利率は「売上総利益率」とも呼ばれます。
例として、架空のラーメン店の1か月の数字で計算します。
| 項目 | 1か月 |
|---|---|
| 売上 | 130万円 |
| 売上原価(麺・スープ・具などの材料費) | 42万円 |
| 粗利 | 88万円 |
| 粗利率 | 67.7% |
88万円÷130万円で、粗利率は67.7%です。1年にすると、売上1,560万円のうち、粗利が1,056万円残る計算です。家賃や人件費、光熱費などは、この粗利から払います。
粗利率が1ポイント変わると、この店では1か月に1.3万円、1年で15.6万円、手元に残るお金が変わります。売上が同じでも、材料の仕入れ値や値付けで粗利率は動きます。
業種別の粗利率の目安
中小企業実態基本調査 令和7年確報(令和6年度決算実績)の「売上高及び営業費用」の表から、法人企業の売上高と売上原価を使って、業種ごとの粗利率を計算しました。

全業種の平均は25.2%です。粗利率が低いのは、仕入れた商品をそのまま売る卸売業(14.4%)や、材料費のかかる製造業(20.9%)です。高いのは、材料費が売上に比べて小さい飲食・サービス業です。
同じ調査の、もう少し細かい業種(中分類)の数字も計算しました。いずれも法人企業の数字です。
| 業種(中分類) | 粗利率 |
|---|---|
| 飲食店 | 63.4% |
| 持ち帰り・配達飲食サービス業 | 49.3% |
| 洗濯・理容・美容・浴場業 | 66.2% |
| 自動車整備業 | 34.9% |
| 織物・衣服・身の回り品小売業 | 45.6% |
| 飲食料品小売業 | 29.4% |
| 飲食料品卸売業 | 13.2% |
| 総合工事業 | 22.2% |
| 設備工事業 | 29.6% |
| 食料品製造業 | 22.7% |
| 金属製品製造業 | 22.8% |
| 道路貨物運送業 | 24.5% |
業界の平均値は、合否を決める線ではなく、自社の位置を知るための目印です。平均値の出どころや使い方は、経営指標の業界平均の記事で説明しています。
同じ業種でも、会社の大きさで粗利率は違う
同じ調査には、従業員の人数別の数字もあります。従業員5人以下の会社と、51人以上の会社を比べると、次のようになります。
| 業種 | 5人以下 | 6〜20人 | 21〜50人 | 51人以上 |
|---|---|---|---|---|
| 全業種 | 30.9% | 28.2% | 24.1% | 22.5% |
| 建設業 | 33.7% | 28.5% | 21.0% | 17.9% |
| 製造業 | 30.0% | 27.9% | 22.2% | 18.3% |
| 小売業 | 30.5% | 28.2% | 31.0% | 29.2% |
| 卸売業 | 11.9% | 14.4% | 13.5% | 16.1% |
建設業や製造業では、小さい会社ほど粗利率が高く出ています。一方、小売業はどの大きさでも30%前後で、卸売業は逆に大きい会社のほうが高くなっています。
自社と比べるときは、業種の平均だけでなく、同じくらいの人数の会社の数字も見ておくと、ずれが小さくなります。
平均と比べる前に:原価に何を入れているかをそろえる
粗利率を同業と比べるとき、いちばん差が出やすいのが、売上原価に何を入れているかです。
たとえば、工場で働く人の給料(労務費)や、外注先への支払い(外注費)を、売上原価に入れる会社と、販売費及び一般管理費(販管費)に入れる会社があります。売上原価に入れれば粗利率は低く出て、販管費に入れれば高く出ます。会社のお金の残り方は同じでも、粗利率だけが変わります。
同じ調査で、売上原価のうち労務費・外注費が占める割合を見ると、業種で大きく違います(法人企業)。
| 業種 | 原価のうち労務費 | 原価のうち外注費 |
|---|---|---|
| 製造業 | 15.4% | 8.9% |
| 建設業 | 11.3% | 46.0% |
| 運輸業・郵便業 | 25.8% | 29.7% |
| サービス業(他に分類されない) | 42.8% | 20.0% |
| 小売業 | 1.1% | 0.8% |
| 宿泊業・飲食サービス業 | 7.0% | 3.1% |
製造業や建設業、運輸業では、人の費用や外注費が売上原価に多く入っています。自社が人件費を販管費に入れているなら、業種の平均より粗利率が高く見えるのは当たり前です。比べる前に、自社の売上原価の中身を確かめてください。
なお、同じ調査では、個人企業の粗利率が法人企業よりかなり高く出ています(運輸業は92.0%など)。法人と数字の出方が大きく違うため、会社の数字と比べるときは、法人企業の数字を使うほうが安全です。
粗利とは別に、売上から変動費だけを引いた「限界利益」で見る方法もあります。限界利益と粗利の違いは、変動損益計算書の記事で説明しています。
平均より低いときに確かめる順番
原価の中身をそろえても、平均より粗利率が低い場合は、次の順に確かめます。
- 前の期と比べて、粗利率が下がっていないか(増収減益の記事の見方)
- 商品やメニューの組み合わせで、粗利率の低いものの売上が増えていないか(相乗積の記事)
- 仕入れ値が上がったのに、売値に反映できていないか(価格転嫁の記事)
粗利率は、業種で決まる部分が大きい数字です。平均より高い・低いだけで判断せず、前の期からの動きと、その理由を見ることが大切です。
クイズ:粗利率を比べてみよう
次の材料で考えます。
- 会社:小さな金属加工の会社(金属製品製造業)
- 1か月の売上:900万円
- 1か月の売上原価:720万円(うち、工場で働く人の給料200万円)
- 従業員:12人
Q1. この会社の粗利率は? 金属製品製造業の平均と比べて高い?低い?
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粗利は900万円−720万円で180万円、粗利率は180万円÷900万円で20.0%です。
金属製品製造業の平均は22.8%なので、2.8ポイント低くなっています。従業員数は、この計算には使いません。
Q2. 同業の会社が、工場で働く人の給料を販管費に入れていた。同じやり方にそろえると、この会社の粗利率は?
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売上原価から給料200万円を外すと、売上原価は520万円、粗利は380万円です。粗利率は380万円÷900万円で42.2%になります。
会社のお金の残り方は変わりません。売上原価に何を入れるかで、粗利率は20.0%にも42.2%にもなるので、比べる前に中身をそろえます。
次の材料で考えます。
- 店:美容室
- 1か月の売上:150万円
- 1か月の売上原価:15万円(カラー剤などの材料費だけ。美容師の給料は販管費)
- 業種の平均:洗濯・理容・美容・浴場業 66.2%(原価のうち労務費は19.9%)
Q3. この店の粗利率は90%で、平均よりずっと高い。「よく儲かっている店」といえる?
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粗利率だけでは、いえません。この店は美容師の給料を売上原価に入れていないので、粗利率が高く出ています。業種の平均には、原価に労務費を入れている会社の数字も含まれています。
儲かっているかどうかは、給料や家賃を払ったあとの営業利益まで見て判断します。
今週やること
- 損益計算書で、売上総利益(粗利)と売上を見て、粗利率を計算する
- 売上原価に、人件費や外注費が入っているかを確かめる
- 自社の業種と、同じくらいの人数の会社の粗利率と比べる
- 前の期の粗利率と比べ、上がった・下がった理由を書き出す
まとめ
- 粗利率は、粗利(売上−売上原価)÷売上で計算する。損益計算書では売上総利益率
- 中小企業(法人)の粗利率の平均は25.2%。卸売業14.4%から宿泊・飲食サービス業66.0%まで、業種で大きく違う
- 同じ業種でも、会社の大きさで違う。建設業は5人以下33.7%、51人以上17.9%
- 売上原価に人件費や外注費を入れるかどうかで、粗利率は大きく変わる。比べる前に中身をそろえる
- 平均より高い・低いより、前の期からの動きとその理由を見る
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