ラーメンだけでなく、餃子やライス、ビールも出しているお店。どのメニューが、いちばん店の粗利を稼いでいるか、すぐに言えるでしょうか。
売上が大きいメニューが、粗利もいちばん稼いでいるとは限りません。メニューごとに粗利率が違うからです。それを1つの数字で見るのが、相乗積(そうじょうせき)です。
私も支援先で、セットやおすすめの出し方で粗利率の高い商品の構成比を上げる提案や、売上の大きい主力商品の原価・価格を見直す提案をしてきました。この記事では、これまでの記事と同じ小さなラーメン店の数字で、相乗積の計算方法と使い方を説明します(数字は架空です)。
相乗積とは:そのメニューが、店全体の粗利率のうち何%分を稼いでいるか
相乗積は、メニュー(商品)ごとの売上構成比と粗利率をかけた数字です。
相乗積=売上構成比×粗利率
- 売上構成比:そのメニューの売上÷店全体の売上
- 粗利率:そのメニューの粗利÷そのメニューの売上(粗利=売上−材料費・仕入れ)
全メニューの相乗積を足すと、店全体の粗利率になります。だから相乗積は、「店全体の粗利率のうち、そのメニューが何%分を稼いでいるか」を表します。
相乗積を見ながら、店全体の粗利率が上がるように売るものの組み合わせを考えることを、粗利ミックス(マージンミックス)と呼びます。小売業でよく使われる考え方ですが、飲食店でも、商品をメニューに置き換えれば同じように使えます。
ラーメン店のメニューで、相乗積を計算してみる
例は、これまでの記事と同じ、1か月の売上135万円のラーメン店です。メニューは4つにしぼります。
- ラーメン:1杯900円(材料費300円)、1か月1,080杯
- 餃子:1皿400円(材料費100円)、1か月405皿
- ライス:1杯200円(材料費40円)、1か月270杯
- ビール:1杯500円(仕入れ250円)、1か月324杯
Q1. ラーメンの相乗積は?
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48.0です。ラーメンの売上は900円×1,080杯=97.2万円で、店全体の売上135万円の72%。粗利率は、1杯の粗利600円÷900円=66.7%。72%×66.7%で、48.0です。
Q2. 4つのメニューの相乗積を足すと、何%?
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66.2%です。これが店全体の粗利率です。粗利の合計89.37万円÷売上135万円でも、同じ66.2%になります。

ラーメンの相乗積48.0は、店全体の粗利率66.2%のうち7割以上です。このお店の粗利は、ほとんどをラーメンで稼いでいます。
ビールは、売上が餃子と同じ16.2万円です。でも粗利率が50%なので、相乗積は6.0で、餃子の9.0より小さくなります。売上の大きさだけでは、どれだけ稼いでいるかは分かりません。
店全体の粗利率を上げる2つの道
相乗積の式から、店全体の粗利率を上げる道は2つあります。
- 粗利率の高いメニューの、売上構成比を上げる
- 売上構成比の高いメニューの、粗利率を上げる
道1:粗利率の高いメニューの構成比を上げる
このお店で粗利率が高いのは、ライス(80%)と餃子(75%)です。ラーメンと一緒に頼んでもらえれば、構成比が上がります。セットにする、券売機やメニュー表の目に付く場所に置く、「餃子もいかがですか」とひと声かける、といった打ち手です。
Q3. 餃子を1日10皿(1か月25日で250皿)多く売ると、店全体の粗利率は?
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66.8%で、0.6ポイント上がります。売上は400円×250皿=10万円増えて145万円。粗利は300円×250皿=7.5万円増えて96.87万円。96.87万円÷145万円で、66.8%です。
道2:構成比の高いメニューの粗利率を上げる
構成比の高いラーメンは、粗利率が少し動くだけで、店全体に大きく効きます。相乗積は構成比×粗利率なので、ラーメンの粗利率が1ポイント上がると、店全体は0.72ポイント上がります。餃子の粗利率が1ポイント上がっても、店全体は0.12ポイントです。
Q4. ラーメン1杯の材料費を、300円から270円に30円下げると、店全体の粗利率は?
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68.6%で、2.4ポイント上がります。ラーメンの粗利率は630円÷900円=70%になり、相乗積は72%×70%=50.4で、2.4増えます。粗利は30円×1,080杯=3.24万円増えて92.61万円。92.61万円÷135万円で、68.6%です。

粗利率が大きく上がるのは、道2です。でも、粗利の額が大きく増えるのは道1で、月7.5万円(1年にすると90万円)。道2は月3.24万円(1年で約39万円)です。道1は、売上そのものが増えるからです。
2つの道は、どちらか一方を選ぶものではありません。支援先でも、この2つの道の両方を提案してきました。ラーメン1杯の材料費と値段の見直しは、変動損益計算書の記事でも取り上げています。
粗利率だけを追わない:粗利の「額」も見る
相乗積は、店全体の粗利率を「率」で見る道具です。率だけを見ていると、判断を間違えることがあります。
たとえば、このお店がビールをやめたとします。粗利率50%のビールがなくなるので、店全体の粗利率は66.2%から68.4%に上がります。でも粗利の額は、月8.1万円減ります。1年にすると97.2万円です。
家賃や人件費などの固定費を払うのは、率ではなく粗利の額です。ビールを目当てに来ていたお客さんが減れば、ラーメンの売上まで減るかもしれません。粗利率を上げる打ち手を考えたら、粗利の額が増えるか減るかも確かめます。
「飲食店の原価率は30%」との関係
飲食店の原価率は30%が目安、とよく言われます。原価率は、100%から粗利率を引いた数字です。
このお店の原価率は、店全体で33.8%(100%−66.2%)です。メニューごとに見ると、ラーメン33.3%、餃子25%、ライス20%、ビール50%とばらばらです。店全体の原価率は、どのメニューがどれだけ売れたかの結果として決まります。
原価率を下げたいときも、1品ずつの原価だけでなく、相乗積でメニューの組み合わせを見ると、打ち手が増えます。
今週やること
- レジから、先月のメニュー別の売上と数を出す
- メニューごとに、1つあたりの材料費・仕入れから粗利率を出す
- 売上構成比×粗利率で相乗積を出し、足すと店全体の粗利率になるか確かめる
- 道1と道2から打ち手を1つ選び、粗利の額が増えるかも計算する
取引先ごとの稼ぎ頭は取引先のABC分析の記事で、部門や店舗ごとの稼ぎは貢献利益の記事で見られます。財務分析の全体の考え方は中小企業向け 財務分析の勘所と考え方にまとめています。
まとめ
- 相乗積=売上構成比×粗利率。全メニューの相乗積を足すと、店全体の粗利率になる
- 売上が大きいメニューが、粗利もいちばん稼いでいるとは限らない
- 店全体の粗利率を上げる道は2つ。粗利率の高いメニューの構成比を上げる、構成比の高いメニューの粗利率を上げる
- 率だけでなく、粗利の額も見る
メニューごとの数字は、一度出して終わりではなく、毎月見ていくものです。
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