宮城県事業承継・引継ぎ支援センターとは?センターに無料で相談できることと、M&A仲介を選ぶときの確認点

小さな店の古い木のカウンターに、使い込まれた真鍮の鍵と新しい銀色の鍵が並んで置かれている

宮城県事業承継・引継ぎ支援センターは、会社や事業を誰かに引き継ぎたい経営者が、無料で相談できる国の公的な窓口です。後継者がいない、後継者はいるけれど進め方が分からない、従業員の雇用を守るために事業を引き継いでほしい、といった相談を受けています。

この記事では、センターに相談できることと相談の流れ、事業承継の3つの形を説明します。あわせて、民間のM&A仲介会社に依頼するときに、契約の前に確かめておきたいことを、中小企業庁の「中小M&Aガイドライン」に沿ってまとめます。

目次

宮城県事業承継・引継ぎ支援センターとは

事業承継・引継ぎ支援センターは、国がすべての都道府県に設置している公的な相談窓口です。宮城県のセンターは、公益財団法人みやぎ産業振興機構が運営していて、弁護士や会計士などの専門家が相談に応じます(宮城県事業承継・引継ぎ支援センター「センターとは」)。

項目内容
対象事業承継・引継ぎを考えている中小企業(法人・個人)
費用相談は何回でも無料
相談のしかた予約制・秘密厳守。電話かお問い合わせフォームで申し込む
電話022-722-3884
受付時間月曜〜金曜 9:00〜16:00(土日祝日・年末年始を除く)
所在地仙台市青葉区二日町12-30 日本生命勾当台西ビル8階
実績相談 約3,000件、成約(第三者承継・従業員承継)222件(令和8年3月現在)

所在地は、借入や資金繰りの相談先である宮城県中小企業活性化協議会と同じビルです。

事業承継の3つの形

事業承継は、誰に会社を継ぐかで、大きく3つの形に分かれます。センターのウェブサイトでも、この3つを選択肢として示しています。

事業承継の3つの形の図。親族内承継、従業員などへの承継、第三者への承継(M&A)と、それぞれで決めること。宮城県事業承継・引継ぎ支援センターは3つの形のどれでも相談できる国の公的窓口
  • 親族内承継:子どもなどの親族に継ぐ形です
  • 従業員などへの承継:役員や従業員など、親族以外の社内の人に継ぐ形です
  • 第三者への承継:社外の会社や個人に、事業や株式を譲る形です。いわゆるM&Aです

どの形でも、会社の株式を誰がどう引き継ぐか、借入の経営者保証をどうするか、引き継ぐ人が借入を返していけるか、を決める必要があります。返していけるかは、本業で毎月いくら残るか(返済原資の記事)と、会社の財務の体力(自己資本比率の記事)で確かめます。

センターに相談できることと、相談の流れ

センターには、センターに直接申し込む方法と、地域の「事業承継ネットワーク」の機関で「事業承継診断」を受けてから専門家の支援につなぐ方法があります(センター「ご相談の流れ」)。センターに直接申し込む場合の流れは次のとおりです。

  1. 電話かお問い合わせフォームで、相談の日時を予約する
  2. センターの窓口で相談する(遠い場合は出張相談。相談料・交通費はかからない)
  3. M&Aを進めたい場合は、事業を引き受ける会社の紹介、相手の会社との情報のやりとり、M&Aの実行まで支援を受ける

センターのよくある質問によると、次のような相談もできます。

  • 後継者がいないので廃業も考えている
  • 後継者は決まっているが、手続きや決めておくこと、引き継ぎの時期が分からない

相談のときは、事業の概要を確かめるため、確定申告書と決算報告書を持っていきます。また、センターには「後継者人材バンク」もあります。創業を目指す人や、経験・技術を生かして独立したい人と、後継者のいない会社や事業主を引き合わせる仕組みです。

なお、センターへの相談は無料ですが、詳しい事業承継診断や事業承継計画の策定、具体的なM&Aのサポートを専門家に依頼する場合は、その専門家への手数料がかかる場合がある、とされています。

民間のM&A仲介・FAに依頼するときの確認点

第三者への承継では、民間のM&A専門業者に依頼することもあります。専門業者には、売り手・買い手の両方と契約する「仲介者」と、どちらか一方とだけ契約する「FA(フィナンシャル・アドバイザー)」がいます。中小企業庁の「中小M&Aガイドライン(第3版)」は、契約の前に次のことを確かめるよう求めています。

確認すること中小M&Aガイドラインの考え方
仲介者かFAか仲介者は双方から依頼を受けるため、どちらか一方の利益だけを優先することはできない。FAは一方の依頼者にとって有利な条件を目指す
手数料の決め方成功報酬の割合だけでなく、何を基準にするか(譲渡額・移動総資産額・純資産額)と、最低手数料を確かめる
契約前の説明重要な事項を書面などで説明してもらい、十分に検討する時間をとる
セカンド・オピニオン業務内容や報酬が妥当か、事業承継・引継ぎ支援センターを含む他の支援機関に意見を求めることも有効
専任条項他の仲介者・FAへの依頼を禁止する条項があるか。契約期間は最長でも6か月〜1年以内が目安

M&A支援機関登録制度のホームページでは、登録された仲介者・FAの手数料の決め方(報酬率、基準にする額、最低手数料など)をデータベースで確かめられます。手数料の簡易計算ツールもあります。不適切な対応を受けたときの情報提供の窓口も、同じサイトにあります。

クイズ:小さな会社ほど、最低手数料が重くなる

M&Aの成功報酬は、「レーマン方式」で計算されることが多くあります。譲渡額などの基準になる額を段階に分け、段階ごとに割合をかけて合計する方法です。中小M&Aガイドラインでは、一例として、5億円以下の部分は5%、5億円超10億円以下の部分は4%、と示しています(割合は仲介者・FAごとに異なります)。

また、小さな会社では成功報酬が少なくなるため、最低手数料を設けている仲介者・FAが多いとされています。ガイドラインの計算例にならって、2つの会社で手数料を比べます(数字は例です)。

  • A社の譲渡額:2,000万円
  • 着手金:100万円(税抜)
  • 成功報酬:譲渡額の5%。ただし最低手数料は500万円(税抜)
  • 月額報酬・中間金:なし
  • 消費税:10%
  • A社の従業員:5人

Q1. A社が払う手数料の合計は、税込でいくら?

答えを見る

660万円です。成功報酬は2,000万円×5%=100万円ですが、最低手数料の500万円を下回るので、500万円になります。着手金100万円と合わせて600万円、消費税を足して660万円です。

譲渡額2,000万円の33%にあたります。手元に残るのは1,340万円です。従業員の人数は、手数料の計算には使いません。

  • B社の譲渡額:1億円
  • 手数料の条件:A社と同じ(着手金100万円、成功報酬5%、最低手数料500万円、いずれも税抜)

Q2. B社が払う手数料の合計は、税込でいくら? 譲渡額の何%?

答えを見る

660万円で、譲渡額の6.6%です。成功報酬は1億円×5%=500万円で、最低手数料とちょうど同じです。

この例は、中小M&Aガイドラインに載っている計算例(譲渡額1億円の株式譲渡)と同じ結果です。A社とB社は同じ金額の手数料を払いますが、譲渡額に占める割合は5倍違います。

最低手数料があると小さな会社ほど手数料が重くなることを示す図。着手金100万円と成功報酬5%(最低手数料500万円)のとき、税込の手数料は譲渡額2,000万円で660万円(33%)、譲渡額1億円でも660万円(6.6%)

手数料の決め方は、仲介者・FAごとに違います。レーマン方式を使わず定額にしているところもあります。小さな会社ほど、契約の前に最低手数料を含めた手数料の総額を確かめ、必要ならセンターにセカンド・オピニオンを求めると安心です。

新しくできる「中小M&A資格試験」

中小M&Aの市場が広がる一方で、十分な説明がされていない事案や、利益相反のある状態で取引が進んだ事案、経営者保証が解除されないといった不適切な買い手の問題が見られました。そこで中小企業庁は、中小M&Aの支援に必要な倫理観や知識を証明する資格として、「中小M&A資格試験」を実施します(中小企業庁の公募)。試験を実施する機関には、株式会社銀行研修社が選ばれました(採択結果、2026年5月1日)。

試験の土台には、中小企業庁が2025年4月にまとめた「中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ」があります。M&Aの流れを、事前相談、企業価値の評価、相手探し、基本合意、買収前の調査(デュー・ディリジェンス)、最終契約、取引の完了、完了後の統合の8つに分け、それぞれに必要な知識を整理しています。このブログでも、この流れに沿って順番に解説していきます。

事業承継に使える補助金

事業承継やM&Aにかかる費用の一部を補助する「事業承継・M&A補助金」もあります。事業承継促進枠、専門家活用枠、PMI推進枠(PMIはM&Aの後の統合のこと)、廃業・再チャレンジ枠の4つの枠があります。

2026年10月21日時点では16次公募の受付中で、申請の期限は2026年11月6日(金)17時です。前回の15次公募では、551件の申請に対して338件が採択されました。対象になる経費や補助率、上限額は枠ごとに違うので、公募要領で確かめます。

まとめ

  • 宮城県事業承継・引継ぎ支援センターは、事業承継を何回でも無料で相談できる国の公的窓口。仙台市青葉区二日町にあり、予約制
  • 事業承継は、親族内・従業員など・第三者(M&A)の3つの形に分かれ、どの形でも相談できる
  • 民間のM&A仲介・FAに頼むときは、仲介かFAか、手数料の基準と最低手数料、契約前の説明、専任条項を確かめる
  • 最低手数料があると、譲渡額の小さな会社ほど手数料の割合が重くなる
  • 支援者向けの「中小M&A資格試験」が新しく実施される。費用には事業承継・M&A補助金も使える

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