資金繰り表とは?作り方をラーメン店の数字で|月末は足りても月の途中で足りない。資金繰り表の簡易版と詳細版

閉店後のラーメン店の木のカウンターに、閉じたノートと鉛筆が置かれ、奥の棚に白いどんぶりが並んでいる

資金繰り表は、お金の入りと出を時期ごとに並べて、手元にいくら残るかを見る表です。月ごとに作る簡易版と、月の中を10日ごとや1日ごとに分けて作る詳細版があります。

私も経理のころに資金繰り表を回していて、支援先とも資金繰り表を一緒に作ってきました。支援の中では、月末の残高は足りているのに、月の途中でお金が足りなくなる場面も見てきました。この記事では、これまでの記事と同じ小さなラーメン店の数字で、簡易版と詳細版の作り方と使い分けを説明します(数字は架空です)。

目次

資金繰り表とは:損益計算書では見えない「いつ、いくら残るか」を見る

損益計算書は、1年や1か月でいくらもうかったかを見る表です。ただ、利益とお金の動きは一致しません。

  • 掛けで売った売上は、入金されるまで手元のお金にならない
  • 掛けで仕入れたものは、払う月までお金が出ていかない
  • 借入金の返済や設備の購入は、お金は出ていくのに、費用には一部しか出てこない
  • 減価償却費は費用だが、その年にお金は出ていかない

資金繰り表は、この「いつ入って、いつ出ていくか」を並べて、足りなくなる時期を先に見つけるための表です。中小機構のJ-Net21も、「資金繰り表にはきまったフォーマットはありません」と書いています(J-Net21「資金繰り表って何ですか?」)。自社の入りと出に合わせて作れば十分です。

資金繰り表の作り方:4つの手順

  1. はじめの残高を書く(月ごとなら、前の月末の残高)
  2. 入ってくるお金を書く(現金の売上、売掛金の入金、借入れなど)
  3. 出ていくお金を書く(仕入れの支払い、人件費、家賃、借入金の返済、設備の購入など)
  4. 終わりの残高を出す(はじめの残高+入るお金−出るお金)

ポイントは2つです。

  • お金が動かないものは入れない。減価償却費は費用ですが、お金は出ていきません
  • 掛けのものは、お金が動く月にずらして入れる。10月に掛けで仕入れて11月に払うなら、11月の欄に入れます

簡易版:月ごとに作る

まずは月ごとの簡易版です。例のラーメン店は現金で売るので、売上はそのまま入ってくるお金になります。仕入れは前の月の分を、月末に払っています。

  • 10月のはじめの残高:80万円
  • 売上:135万円
  • 仕入れの支払い:40万円
  • 人件費:50万円
  • 家賃:15万円
  • 水道光熱:12万円
  • その他:10万円
  • 借入金の返済:15万円
  • 減価償却費:10万円

Q1. 10月末の残高は?

答えを見る

73万円です。80万円+135万円−(40+50+15+12+10+15)万円=80万円+135万円−142万円=73万円。

減価償却費の10万円は入れません。費用ですが、10月にお金は出ていかないからです。

同じように11月と12月も作ると、次の表になります。12月は売上が増えますが、冬の賞与20万円と、冷蔵庫の買い替え40万円が重なります。

(万円)10月11月12月
はじめの残高807370
入るお金:売上135140160
仕入れの支払い404042
人件費505070(賞与20を含む)
家賃151515
水道光熱121314
その他101010
借入金の返済151515
設備(冷蔵庫)0040
出るお金の合計142143206
終わりの残高737024
  • 11月末の残高:70万円
  • 12月の売上:160万円
  • 12月に出るお金の合計:206万円

Q2. 12月末の残高は?

答えを見る

24万円です。70万円+160万円−206万円=24万円。

月ごとに見ると、12月もプラスで終わります。残高はかなり減りますが、足りなくはならないように見えます。

詳細版:10日ごとに分けると、月の途中の不足が見える

ところが、12月を10日ごとに分けると、景色が変わります。このお店は、出ていくお金の日が次のように決まっています。

  • 家賃:1日
  • 冷蔵庫の代金:3日(納品の日に払う約束)
  • 給料と賞与:10日
  • 水道光熱:15日
  • 借入金の返済:20日
  • 仕入れの支払い・その他:月末

売上は毎日入ってきますが、出ていくお金は上旬に集まっています。

  • 12月のはじめの残高:70万円
  • 1〜10日の売上:52万円
  • 家賃(1日):15万円
  • 冷蔵庫の代金(3日):40万円
  • 給料と賞与(10日):70万円
  • 仕入れの支払い(月末):42万円

Q3. 12月10日の終わりの残高は?

答えを見る

マイナス3万円です。70万円+52万円−(15+40+70)万円=122万円−125万円=−3万円。

仕入れの支払い42万円は月末なので、10日までには入れません。月末の残高は24万円あるのに、10日の給料日に3万円足りなくなります。

12月(万円)1〜10日11〜20日21〜31日
はじめの残高70−320
入るお金:売上525256
出るお金125(家賃・冷蔵庫・給料と賞与)29(水道光熱・返済)52(仕入れ・その他)
終わりの残高−32024
ラーメン店の手元のお金の比較図。簡易版(月ごと)では10月末73万円、11月末70万円、12月末24万円でプラスのまま。詳細版(12月を10日ごと)では、家賃・冷蔵庫・給料と賞与の支払いが上旬に集まり、12月10日にマイナス3万円、20日に20万円、31日に24万円

月ごとの資金繰り表で見ていると、この不足は見えません。実際には、給料日の前に慌てて借りる、支払いを待ってもらう、といった対応になりがちです。

簡易版と詳細版の使い分け

簡易版(月ごと)詳細版(10日ごと・1日ごと)
作る範囲6か月〜1年先まで残高が少ない月、大きな支払いがある月
分かること月末に足りるか、どの月が苦しいか月の途中のどの日に足りなくなるか
手間月に1回、少しずつ更新支払い日ごとに並べるので手間がかかる

まず簡易版を毎月回し、次の2つに当てはまる月だけ、詳細版で中身を分けると手間が少なく済みます。

  • 月末の残高が、ほかの月より大きく減る月
  • 「はじめの残高+上旬に入るお金」より、「上旬に出るお金」のほうが多い月(例の12月は122万円と125万円)

資金が特に厳しい時期は、10日ごとをさらに1日ごとにした日繰り表で、毎日の残高を見ることもあります。

足りない日が見えたら、先に打つ手

足りない日が先に分かれば、打てる手が増えます。例の12月なら、次のような手があります。

  • 大きな支払いの日をずらす。冷蔵庫の代金を、納品の日ではなく月末払いや翌月払いにしてもらえないか相談する。1月払いにできれば、10日の残高は37万円、12月末は64万円になる
  • 設備のお金は借入れでまかなう。冷蔵庫のように何年も使う設備は、手元のお金ではなく長期の借入れで買う考え方もある(固定長期適合率の記事)
  • 足りなくなる前に、金融機関に相談する。給料日の前日に頼むより、資金繰り表を持って1〜2か月前に相談するほうが話が通りやすい
  • 入るお金を早める。掛けで売っている会社なら、回収の時期を見直す(所要運転資金の記事)

資金繰り表のお金の出入りのうち、本業で毎月どれだけ残るかは返済原資の記事、1年で長期と短期のお金がどう動いたかは資金運用表の記事で見られます。

今週やること

  1. 通帳を見て、毎月決まって出ていくお金の「日」を書き出す
  2. 来月から6か月分、月ごとの簡易版を作る
  3. 残高が大きく減る月があれば、その月だけ10日ごとの詳細版を作る
  4. 大きな支払いの予定(賞与・税金・設備)を、資金繰り表に先に入れておく

財務分析の全体の考え方は、中小企業向け 財務分析の勘所と考え方にまとめています。

まとめ

  • 資金繰り表は、お金の入りと出を時期ごとに並べて、手元にいくら残るかを見る表。決まった形はない
  • 減価償却費は入れない。掛けのものは、お金が動く月にずらして入れる
  • 月ごとの簡易版で月末が足りていても、支払い日が上旬に集まると、月の途中で足りなくなることがある
  • 簡易版を毎月回し、苦しい月だけ10日ごと・1日ごとの詳細版で中身を見る
  • 足りない日が先に分かれば、支払いの時期をずらす、早めに借入れを相談するなどの手が打てる

資金繰り表を一緒に作り、毎月の数字を一緒に見る相手として、中小企業診断士の顧問を月3万円・定員3社でお受けしています。月1回の面談で数字を一緒に見て、次の一手を決めます。それ以外の日は、LINEでいつでも相談できます。

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