経営力向上計画とは?メリットと申請の流れを診断士が解説|宮城の会社は、業種で経営力向上計画の提出先が変わる

作業場に設置されたばかりの新しい旋盤。窓から朝の光が差し込み、奥に木の作業台がある

経営力向上計画は、3〜5年の計画書を国に出して認定を受けると、設備投資の税金や借入れで支援が受けられる制度です。申請書の様式は3枚程度です。

私も支援先で、経営力向上計画の作成を支援してきました。この記事では、制度の中身とメリット、申請の流れ、つまずきやすいところを、中小企業庁の手引きに沿って説明します。最後に、宮城の会社の提出先を業種別にまとめました。

目次

経営力向上計画とは:3〜5年の計画で、労働生産性を上げる

経営力向上計画は、中小企業等経営強化法にもとづく制度です。人材育成やコスト管理、設備投資など、自社の経営力を上げる取り組みを計画にして、業種を担当する大臣(実際の窓口は各地の国の出先機関)の認定を受けます(中小企業庁「経営力向上支援」)。

  • 計画期間:3年、4年、5年のいずれか
  • 計画のもとにする考え方:業種ごとの「事業分野別指針」。指針がない業種は「基本方針」
  • 基本方針で作るときの目標:労働生産性。5年の計画なら、5年後までに2%以上上げるのが原則(業種や規模を見て弾力的に決めることもできる)

基本方針の目標は、中小企業庁の「事業分野別指針及び基本方針」のページにあります。労働生産性は、次の式で出します。

労働生産性=(営業利益+人件費+減価償却費)÷働く人の数

人件費と減価償却費を足し戻すのは、もうけだけでなく、人と設備が生み出した価値を見るためです。1人あたりの付加価値の考え方は、賃上げと労働分配率の記事でも説明しています。

例として、これまでの記事と同じ小さなラーメン店の、1年の数字で計算してみます(数字は架空です)。

  • 営業利益:120万円
  • 人件費:600万円
  • 減価償却費:100万円
  • 働く人:4人
  • 1年の売上:1,620万円

Q1. このラーメン店の労働生産性は?

答えを見る

205万円です。(120万円+600万円+100万円)÷4人=820万円÷4人=205万円。

1年の売上は、この計算では使いません。

  • いまの労働生産性:205万円(Q1の答え)
  • 計画期間:5年
  • 5年の計画の目標:5年後までに2%以上

Q2. 5年後に目指す労働生産性は、最低いくら?

答えを見る

209.1万円です。205万円×1.02=209.1万円。

5年で2%なので、1年ずつ大きく伸ばす計画でなくても届く目標です。そのかわり、計画の最後の年の数字は「正の値」(プラス)である必要があります。

認定されると受けられる3つの支援

経営力向上計画のメリットは、認定のあとに使える支援です。中小企業庁の手引きでは、大きく3つに分かれています。

① 税制:中小企業経営強化税制で、即時償却か税額控除

認定を受けた計画にもとづいて、決められた設備を取得して事業に使うと、法人税(個人事業主は所得税)で次のどちらかを選べます。これが中小企業経営強化税制です。

  • 即時償却:取得した年に、設備の代金を全額まとめて経費にする
  • 税額控除:取得価額の10%を、税金から差し引く(資本金3,000万円超の法人は7%)

対象は、令和9年3月31日までに取得して事業に使った設備です。即時償却は、税金の総額が減るというより、払うタイミングを先に延ばす効果が中心です。どちらが得かは、その年の利益の見込みで変わるので、税理士と相談して決めます。

② 金融:日本政策金融公庫の融資や、信用保証の別枠

認定を受けた計画の設備投資などに、日本政策金融公庫の融資が使えます(国民生活事業は7,200万円まで、うち運転資金4,800万円まで)。民間の金融機関から借りるときも、信用保証協会の保証を、ふだんの枠とは別に受けられます。

金融支援を使いたいときは、計画を申請する前に、金融機関に相談しておく必要があります。設備のお金を何年で借りるかは、固定長期適合率の記事も参考にしてください。

③ 法的支援:許認可の引き継ぎなど

事業を引き継ぐときに、業法の許認可を引き継げる特例などがあります。使う場面は限られるので、ここでは名前だけにとどめます。

いちばんの注意:設備は「買う前」に段取りする

計画を作るときに、いちばん大事なのが順番です。税制を使う設備は、買う前に証明書や確認書を申請する必要があります。

  • 生産性が上がる設備(A類型):設備メーカーを通じて、工業会の証明書を取る
  • 投資の利益率で見る設備(B類型)など:経済産業局の確認書を取る

計画を出す前に設備を買ってしまった場合も、条件つきで間に合うことがあります。取得から60日以内に計画書が届いていて、その設備を使い始めた事業年度のうちに認定を受けることです。事業年度をまたぐと、税制は使えません。

経営力向上計画の流れ。1事業分野と指針を確かめる、2設備の証明書・確認書を買う前に申請、3計画書を作る(様式は3枚程度)、4業種ごとの提出先へ申請、5認定(申請から約30日)、6設備を取得して使い始める、7税務申告で税制を使う

宮城の会社の経営力向上計画の提出先は、業種で変わる

経営力向上計画は、業種を担当する国の機関に出します。宮城の会社なら、多くは仙台市内にある東北の出先機関です。中小企業庁の「事業分野と提出先」の一覧(2026年9月3日更新)から、主な業種を抜き出しました。

業種提出先(宮城の会社)
製造業(一般)、卸売・小売(一般)、情報サービス業東北経済産業局
建設業、不動産業東北地方整備局
食料品・飲料の製造、食料品・飲料の卸売・小売、農林水産業東北農政局
外食・中食一覧には東北農政局と東北厚生局の2つが載っている
酒類の製造・卸売・小売仙台国税局
貨物・旅客の運送、倉庫、自動車整備東北運輸局
理容・美容、クリーニング、医療・介護東北厚生局

外食・中食のように2つ載っている業種や、2つ以上の業種にまたがる計画は、出す前に一覧で確かめます。例のラーメン店は外食なので、ここに当たります。

申請から認定までは約30日です。複数の省庁にまたがると約45日かかります。経営力向上計画申請プラットフォームから電子申請し、宛先が経済産業部局だけの場合は約14日です(いずれも休日を除く)。

申請の流れと、つまずきやすいところ

  1. 日本標準産業分類で自社の業種を確かめ、事業分野別指針(なければ基本方針)を読む
  2. 税制を使う設備があれば、証明書・確認書を先に申請する
  3. 計画書を作る(様式は3枚程度)
  4. 業種ごとの提出先に、紙か電子申請で出す
  5. 認定を受けてから、計画どおり取り組む

手引きの注意書きのうち、つまずきやすいのは次の3つです。

  • さかのぼって申請できるのは2か月まで。計画の開始日を、申請日より前にしすぎない
  • 設備は、計画の期間のうちに取得する。期間の外で買った設備は、計画の対象にならない
  • 計画を変えるときは、変更の申請が要る。設備を追加するときも同じで、60日のルールも同じようにかかる

計画づくりは、商工会議所・商工会や金融機関、士業などの認定支援機関に手伝ってもらうこともできます。似た制度の経営革新計画と比べると、経営力向上計画は様式が短く、設備投資の税制とつながっているのが特徴です。

今週やること

  1. 日本標準産業分類で自社の業種を確かめ、提出先を一覧で調べる
  2. 直近の決算書から、労働生産性(営業利益+人件費+減価償却費÷人数)を出す
  3. これから1年以内に買う設備があれば、メーカーに証明書が出せるかを聞く
  4. 税制を使うなら、即時償却と税額控除のどちらにするかを税理士と話す

財務分析の全体の考え方は、中小企業向け 財務分析の勘所と考え方にまとめています。

まとめ

  • 経営力向上計画は、3〜5年の計画を出して認定を受けると、税制・金融・法的支援が受けられる制度。様式は3枚程度
  • 基本方針なら目標は労働生産性。5年の計画なら5年後までに2%以上が原則
  • 中小企業経営強化税制は、即時償却か10%(資本金3,000万円超は7%)の税額控除。令和9年3月31日まで
  • 税制を使う設備は、買う前に証明書・確認書を申請する。先に買ったら60日以内・その事業年度のうちに認定
  • 宮城の会社の提出先は業種で変わる。出す前に一覧で確かめる

計画を作るところから、設備をいつ買い、どう借りるかまで、数字を一緒に見て決める相手として、中小企業診断士の顧問を月3万円・定員3社でお受けしています。月1回の面談で数字を一緒に見て、次の一手を決めます。それ以外の日は、LINEでいつでも相談できます。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次