経営革新計画は、いま取る意味があるのか|加点での位置と経営革新計画の価値

白紙の書類と電卓、湯呑みが置かれた机の上を俯瞰した写真

補助金の加点がほしくて経営革新計画を申請しようか迷っている、という方に向けて書いています。

先に結論を書きます。加点だけが目的なら、以前ほど割に合わなくなっているのではないかと思っています。 ただ、計画を作ること自体には別の意味があって、私はそちらのほうが大きいと感じています。

理由は、加点の並び方が変わったからです。順に説明します。

目次

こんなことで迷っていませんか

  • 「経営革新計画って、難しいんでしょうか」
  • 「承認率はどのくらいなんだろう」
  • 「デメリットはないんでしょうか」

検索するとこうした言葉がよく出てきます。どれも「手間に見合うのか」という一点につながる疑問だと思います。この記事では、そこを制度の資料と、私自身が支援したときの経緯からお話しします。

経営革新計画とは、ごく短く

中小企業等経営強化法にもとづく制度で、都道府県知事の承認を受けるものです。「新事業活動」に取り組んで、経営の相当程度の向上を図る、という中期的な計画を作ります。

対象になるのは、次の5つのいずれかを含む取り組みです(宮城県|中小企業経営革新支援事業)。

  1. 新商品の開発または生産
  2. 新役務の開発または提供
  3. 商品の新たな生産または販売の方式の導入
  4. 役務の新たな提供の方式の導入
  5. 技術に関する研究開発およびその成果の利用その他の新たな事業活動

注意したいのは、単なる設備の更新や店舗の増設は該当しないということです。県も「単に、生産力増強のための工場の拡張や設備の更新・増強、営業店舗の増設、取扱品目・販売品目を増やす場合などは、新たな事業活動に該当しません」と書いています。加えて、すでに同業種で相当程度普及している技術・方式の導入も対象外とされています。

経営革新計画そのものの詳しい説明は、県や中小企業庁のページが正確です。ここでは、その先の話をします。

いまも、補助金の加点にはなります

まずこの点は、はっきりしています。

今年度から始まった「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」の第1回公募要領(令和8年6月公表)を開くと、48ページの加点項目にこう書かれています。

⑥ 経営革新計画加点

申請締切日時点で有効な「経営革新計画」の承認を取得している事業者

「経営革新計画はもう使えないのでは」という話を耳にすることがありますが、少なくとも加点項目としては、いまも現役です。

なお、この補助金は旧ものづくり補助金と旧新事業進出補助金の後継にあたるもので、革新的新製品・サービス枠、新事業進出枠、グローバル枠の3つに分かれています。

ただ、経営革新計画の加点としての順位は下がりました

ここからが本題です。

同じ公募要領の加点項目を最初から並べると、こうなっています。

加点項目加点項目
パートナーシップ構築宣言新規輸出1万者支援プログラム
くるみん日本の食輸出1万者支援プログラム
えるぼし研究開発費・試験研究費の計上
健康経営優良法人2026技術情報管理認証制度
再生事業者成長加速マッチングサービス
経営革新計画アトツギ甲子園
事業継続力強化計画地域別最低賃金引上げ
DX認定事業場内最低賃金引上げ
J-Startup/J-Startup地域版

全部で17項目あり、経営革新計画は6番目です。

比較のために、前の制度を見てみます。ものづくり補助金の第23次締切公募要領(令和8年2月掲載)では、加点項目は15項目で、経営革新計画がNo.1、つまり一番上に置かれていました

順番そのものに配点の意味があるとは書かれていませんから、そこは断定できません。ただ、私が気になっているのは順位よりも上に並んだ顔ぶれのほうです。

①のパートナーシップ構築宣言は、ポータルサイトで所定のひな形を使って宣言を公表すれば要件を満たします。②のくるみん、③のえるぼし、④の健康経営優良法人は、すでに認定を持っている会社なら、その事実を示すだけです。

一方、経営革新計画はどうか。県に事前相談をして、計画書を作り、審査を受けて、承認を待ちます。宮城県は「申請書は承認が必要な日の二ヶ月前までに御提出願います」「審査には数ヶ月かかることがあります」と案内しています。

同じ「加点」という扱いなら、軽いほうを選ぶのが自然だと思います。 経営革新計画をあまり見かけなくなった、という感覚を持っている方がいるとしたら、制度が消えたからではなく、こういう選択肢が周りに増えたからではないかと考えています。

ちなみに、前の制度の公募要領には「最大6項目について加点の申請を行うことが可能です」という上限が書かれていました。新しい公募要領では、この上限にあたる記載を私は見つけられませんでした。見落としの可能性もありますので、断定はしません。

私が経営革新計画を申請したときも、目的は加点でした

ある事業者の支援で、経営革新計画を申請したことがあります。承認は受けられました。

このときの動機は、はっきりしていました。ものづくり補助金の加点がほしかったからです。 設備投資の計画があり、補助金を使えるなら使いたい。そのために加点を積んでおきたい。順序としては、補助金が先にあって、計画があとから来ていました。

いま振り返ると、これは中小機構が「補助金ありきの計画はダメ」と言っているそのものの形でした。あとで触れます。

その補助金は、公募が出ませんでした

結果を書きます。狙っていたものづくり補助金は、公募が出ませんでした。

不採択だったのではありません。申請の機会そのものが来なかった、ということです。そうしているうちに設備の購入期限が近づいてきて、結局その補助金は使わずに設備を導入しました。

加点のために取った承認は、そのままでは使われないまま残ったことになります。

県は「補助金の都合には合わせない」と書いています

このとき身にしみたことがあります。宮城県のページに、こういう一文があります。

補助金申請等を理由にスケジュールを調整したり、審査等の基準を変えることはありません。

当たり前といえば当たり前です。経営革新計画は補助金の付属品ではなく、それ自体が独立した制度ですから、補助金の公募スケジュールに合わせて審査を早めることはありません。

つまり、補助金の加点を目的に計画を取ろうとすると、二つの別々の時計を同時に見ることになります。 県の審査に数か月、補助金の公募がいつ出るかは国の都合。片方が動かなければ、もう片方の準備は宙に浮きます。私が経験したのは、まさにこれでした。

このリスクは、加点が軽い項目で代替できるようになったいま、以前より重く見えるようになったと感じています。

それでも、計画を作った意味はありました

ここからが、この記事でいちばん書きたかったことです。

補助金が使えなくなったあと、その事業者から別の相談を受けました。導入した設備について、一括償却をしたいという話です。そこで経営力向上計画の申請を支援し、こちらも認定されました。

当初の目的だった加点は空振りでした。けれど、事業の中身を整理して数字に落とした作業そのものは、無駄になりませんでした。次の制度を使うときに、そのまま土台として効いたからです。

計画は、補助金という一つの出口のためだけにあるものではない、というのがこのときの実感です。もちろん、これは一つの経験にすぎません。すべての場合にそうなると言うつもりはありません。ただ、「加点が取れなかったから計画も無駄になった」とはならなかった、という事実は残りました。

そもそも国は、計画を事業者自身に作らせたい

ここは私の推測ではなく、公的機関がはっきり書いていることです。

中小機構の補助金活用ナビは、「経営戦略を考える」というページの冒頭にこう掲げています。

経営戦略を考えることは、補助金活用の第一歩

そして、補助金の事業計画について、こう書いています。

事業計画書の作成は、経営者が自社の経営について見つめ直す絶好の機会です。他人まかせにせず、経営を取り巻く環境、自社のあるべき姿、自社が抱える課題、課題解決のための取り組みなどについて、経営者が考え抜いて、納得できる計画を策定することが何よりも重要です。

さらに、こうも書かれています。

補助金は、制度に会社を合わせるものではなく、会社の経営戦略に合う制度を選ぶものです。

補助金そのものの目的は、あくまで国や自治体の政策目的を実現することだと機構も明記しています。ですから「補助金の目的は計画を作らせることだ」とまでは言えません。ただ、計画を事業者自身が考え抜いて作ることに、制度の側がここまで言葉を割いているのは事実です。

私はこの部分が、補助金という制度のいちばん実用的なところだと思っています。お金が入るかどうかは審査次第で、公募が出るかどうかも国の都合です。自分でコントロールできないものが多い。 けれど、計画を作る過程で自社の課題と数字を整理することは、採択されようがされまいが手元に残ります。

私は診断士になる前、事業会社の経営企画部で中期経営計画の策定と予実管理を担当していました。そのとき感じていたのは、できあがった計画書そのものより、計画を作る過程で社内の見方が揃っていくことのほうが大きい、ということです。数字を置くと、どこがずれているかが見えます。ずれが見えると、次に何を直すかという話ができます。逆に、数字のない議論は感想の言い合いで終わりがちでした。

補助金の事業計画書も、規模も目的も違いますが、起きることは似ているのではないかと思っています。

「申請代行」は、国も機構も県も認めていません

関連して、もう一つ確認しておきたいことがあります。

新しい補助金の案内には、重要注意事項として「申請書は申請者自身が作成必須」と書かれています。ものづくり補助金の公募要領には、不適切な行為の例として「補助金申請代行を主たるサービスとし、申請者が理解しない内容のまま申請する」が挙げられています。宮城県も、経営革新計画について「申請書等の提出(修正後の再提出を含む)は、原則として申請主体である事業者が直接行っていただくようお願いいたします」と書いています。

中小機構は、さらに具体的です。近年は書類審査に加えてオンラインの口頭審査を行う補助金が増えていますが、口頭審査にはコンサルタント等の社外支援者は同席できません。 経営者自身が、審査員に自社の事業を説明することになります。計画の中身を理解していなければ、答えられません。

私が支援に入るときも、書くのは事業者の方です。私は横で、数字の立て方や、伝わりにくい部分の整理を手伝います。代わりに書くことはしません。 制度がそういう設計になっている以上、それが正しいやり方だと考えています。

承認されても、売上が自動で増えるわけではありません

もう一つ、正直に書いておきたいことがあります。

経営革新計画が承認されても、それだけで売上が増えることはありません。新商品を開発する計画なら、その商品を知ってもらう工程が別に必要です。ここは制度の外側の話になります。

私は自社でSEOやMEO、SNS、Web広告を一通り試してきました。うまくいったものもあれば、そうでないものもあります。Google広告は約53万円を投じて、問い合わせにはつながりませんでした。その一方で、費用をほとんどかけていない施策のほうが結果につながったこともあります。同じ「集客」でも、商売の中身によって効くものがまるで違う、というのがそこで得た実感です。

計画の数値目標は、たいてい売上か付加価値額で立てます。その数字を達成する段になると、計画書の外側にある仕事が始まります。承認はゴールではなく、そこがスタートだと考えておいたほうが、あとで慌てずに済むと思います。

自分で書くか、人に頼むか

ここまで書いてきたとおり、計画は事業者自身が作るものです。ただ、初めて作る方にとって、数値計画の立て方や、「新規性」をどう説明するかは、迷いやすいところだと思います。

私自身は、書くのはご本人、整理を手伝うのが私、という形で関わっています。代行はしません。 制度がそれを認めていないからでもあり、ご本人が中身を理解していないと、あとの口頭審査や事業の実行で困るからでもあります。

具体的な進め方については、株式会社CONVYの事業計画策定支援のページにまとめています。「自社である程度書いたものをチェックしてほしい」というご相談も承っています。むしろ、その形がいちばん実になると思っています。

まとめ

  • 経営革新計画は、いまも補助金の加点として有効です(新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 第1回公募要領・加点項目⑥)
  • ただし加点項目は17項目あり、経営革新計画より手軽に満たせるものが上位に並んでいます
  • 加点だけを目的にすると、県の審査と補助金の公募という二つのスケジュールに振り回される可能性があります。私はそれで空振りしました
  • 一方で、計画を作る過程で整理した内容は、別の制度を使うときに土台として残りました
  • 国も機構も県も、計画は事業者自身が作るものだという立場をとっています。中小機構は「事業計画書の作成は、経営者が自社の経営について見つめ直す絶好の機会」と書いています

加点のために計画を作るのではなく、作りたい計画があるから制度を使う。 順番としては、そちらのほうが結果的に得るものが多いのではないかと考えています。

よくある質問

Q. 経営革新計画の承認までどのくらいかかりますか

宮城県は、申請書を「承認が必要な日の二ヶ月前まで」に提出するよう案内しており、「審査には数ヶ月かかることがあります」としています。加えて、計画書を作る前に提出する事前資料もあります。補助金の締切から逆算して動くと間に合わないことがあるので、余裕を見ておいたほうがよいと思います。

Q. デメリットはありますか

手間と時間がかかることが最大の負担だと思います。また、計画には数値目標を設定するため、承認後はその進捗を意識することになります。県はフォローアップを実施するとしています。「取っただけ」で終わらせにくい制度だ、と言い換えることもできます。

Q. 補助金とは何が違いますか

経営革新計画は「計画の承認」であって、お金が交付される制度ではありません。承認を受けると、金融の優遇措置や補助金の加点といった支援策の対象になります。補助金は「事業に対する資金の交付」ですから、別のものです。混同しやすいところなので、最初に整理しておくとよいと思います。

出典(すべて2026年8月31日に確認)

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