一人当たり売上高とは、1年の売上を、働いている人の数で割った数字です。1人がどれだけの売上を生んでいるかを表し、人を増やすときや、同業と効率を比べるときに使います。
一人当たり売上高の目安として、中小企業の法人全体の平均を見ると、1人当たり年2,469万円です。この記事では、中小企業庁の「中小企業実態基本調査」の最新の数字(令和7年確報、2026年6月公表)から、業種別・規模別の一人当たり売上高と、一人当たりの粗利、付加価値を計算しました。あわせて、自社の数字を平均と比べる前に確かめておきたいことを説明します。
一人当たり売上高の計算方法
一人当たり売上高は、次の式で計算します。
一人当たり売上高 = 1年の売上 ÷ 働いている人の数
売上の代わりに粗利で割ると「一人当たり粗利」、付加価値で割ると「一人当たり付加価値」(労働生産性)になります。付加価値は、人件費、家賃、減価償却費、利息、利益などを足したもので、会社が新しく生み出した価値です。一人当たり付加価値の使い方は、賃上げと労働分配率の記事で説明しています。
例として、粗利率の目安の記事と同じ架空のラーメン店の数字で計算します。働いているのは、社長1人、正社員1人、パート2人の4人とします。
| 項目 | 数字 |
|---|---|
| 1か月の売上 | 130万円(1年で1,560万円) |
| 1か月の粗利 | 88万円(1年で1,056万円) |
| 働いている人 | 4人(社長1人・正社員1人・パート2人) |
| 一人当たり売上高 | 1,560万円 ÷ 4人 = 390万円 |
| 一人当たり粗利 | 1,056万円 ÷ 4人 = 264万円 |
飲食店(法人)の平均は、一人当たり売上高576万円、一人当たり粗利365万円なので、この店はどちらも平均より低く出ます。ただし、人の数え方を変えると数字は変わります。これは後で説明します。
業種別の一人当たり売上高の目安
中小企業実態基本調査 令和7年確報(令和6年度決算実績)の「売上高及び営業費用」の表から、法人企業の売上高、粗利(売上総利益)、付加価値額を、従業者数で割って計算しました。

| 業種 | 一人当たり売上高 | 一人当たり粗利 | 一人当たり付加価値 |
|---|---|---|---|
| 全業種 | 2,469万円 | 623万円 | 631万円 |
| 建設業 | 2,715万円 | 680万円 | 754万円 |
| 製造業 | 2,317万円 | 485万円 | 684万円 |
| 情報通信業 | 1,604万円 | 720万円 | 713万円 |
| 運輸業・郵便業 | 1,443万円 | 348万円 | 611万円 |
| 卸売業 | 8,041万円 | 1,162万円 | 829万円 |
| 小売業 | 2,289万円 | 676万円 | 450万円 |
| 不動産業・物品賃貸業 | 3,330万円 | 1,347万円 | 1,330万円 |
| 学術研究・専門・技術サービス業 | 1,494万円 | 814万円 | 783万円 |
| 宿泊業・飲食サービス業 | 651万円 | 429万円 | 299万円 |
| 生活関連サービス業・娯楽業 | 1,681万円 | 581万円 | 433万円 |
| サービス業(他に分類されない) | 758万円 | 327万円 | 425万円 |
一人当たり売上高がいちばん大きいのは卸売業の8,041万円で、小売業(2,289万円)の3.5倍です。ところが、一人当たり粗利で比べると、卸売業1,162万円、小売業676万円で、差は1.7倍に縮まります。卸売業は、仕入れた品を少ない人数で大きな金額のまま流すので、売上は大きくても、手元に残る粗利の割合(粗利率14.4%)は低いためです。
宿泊業・飲食サービス業は、一人当たり売上高が651万円といちばん低くなっています。ただし粗利率が高いので(66.0%)、一人当たり粗利は429万円で、運輸業(348万円)や製造業(485万円)と大きくは変わりません。
もう少し細かい業種(中分類)
同じ調査の、中分類の数字も計算しました。いずれも法人企業の数字です。
| 業種(中分類) | 一人当たり売上高 | 一人当たり粗利 | 一人当たり付加価値 |
|---|---|---|---|
| 飲食店 | 576万円 | 365万円 | 254万円 |
| 洗濯・理容・美容・浴場業 | 761万円 | 504万円 | 397万円 |
| 自動車整備業 | 1,627万円 | 567万円 | 549万円 |
| 道路貨物運送業 | 1,444万円 | 354万円 | 604万円 |
| 飲食料品小売業 | 1,675万円 | 493万円 | 298万円 |
| 織物・衣服・身の回り品小売業 | 1,754万円 | 799万円 | 467万円 |
| 機械器具小売業 | 3,516万円 | 876万円 | 674万円 |
| 総合工事業 | 3,082万円 | 683万円 | 761万円 |
| 設備工事業 | 2,419万円 | 717万円 | 780万円 |
| 食料品製造業 | 1,950万円 | 442万円 | 483万円 |
| 金属製品製造業 | 2,044万円 | 466万円 | 730万円 |
| 印刷・同関連業 | 1,725万円 | 424万円 | 613万円 |
| 情報サービス業 | 1,277万円 | 594万円 | 646万円 |
| 飲食料品卸売業 | 7,383万円 | 974万円 | 590万円 |
| 不動産賃貸業・管理業 | 2,006万円 | 1,242万円 | 1,349万円 |
| 専門サービス業 | 1,324万円 | 1,052万円 | 898万円 |
業種の平均は、合否を決める線ではなく、自社の位置を知るための目印です。平均値の使い方は、経営指標の業界平均の記事で説明しています。
会社の規模と一人当たり売上高
従業員の人数別に見ると、全業種では、5人以下が2,658万円、6〜20人が2,444万円、21〜50人が2,699万円、51人以上が2,343万円で、規模による差は大きくありません。一人当たり粗利は、5人以下が820万円、51人以上が527万円で、小さい会社のほうが高く出ています。
| 業種 | 5人以下 | 6〜20人 | 21〜50人 | 51人以上 |
|---|---|---|---|---|
| 全業種 | 2,658万円 | 2,444万円 | 2,699万円 | 2,343万円 |
| 建設業 | 2,125万円 | 2,447万円 | 2,832万円 | 3,798万円 |
| 製造業 | 1,989万円 | 1,747万円 | 2,078万円 | 2,604万円 |
| 小売業 | 2,074万円 | 2,370万円 | 2,023万円 | 2,449万円 |
| 宿泊業・飲食サービス業 | 760万円 | 615万円 | 657万円 | 639万円 |
建設業と製造業では、会社が大きいほど一人当たり売上高が高くなる傾向があります。
平均と比べる前に確かめる3つのこと
1. 人の数え方:パートも1人と数えているか
この調査の従業者数は、ある時点(平成25年調査では3月31日現在)の人数です。同じ調査の用語の解説(平成25年調査の報告書)では、常用雇用者を「正社員・正職員+パート・アルバイト」としていて、パートも1人として数えます。社長などの有給役員も入ります。
飲食店の一人当たり売上高が低く出るのは、パート・アルバイトの多い業種であることも一因と考えられます。自社の数字を計算するときも、平均と同じように、パートを1人と数えてそろえます。
先ほどのラーメン店で、パート2人を正社員1人分の時間とみなして3人で割ると、一人当たり売上高は520万円、一人当たり粗利は352万円になります。数え方だけで、390万円が520万円に変わります。社内で人を増やすかを考えるときは時間で換算した人数が役に立ちますが、この調査の平均と比べるときは、頭数で計算します。
2. 売上ではなく粗利で見る
一人当たり売上高は、仕入れた品をそのまま売る割合が高いほど大きく出ます。卸売業と小売業の比較のように、業種や商売の形が違う会社を比べるときは、一人当たり粗利のほうが実態に近くなります。粗利率の業種別の数字は粗利率の目安の記事に、営業利益率は営業利益率の目安の記事にあります。
3. 外注に出している仕事の量
同じ業種でも、仕事を外注に多く出す会社は、少ない人数で同じ売上を上げるので、一人当たり売上高は高く出ます。その分、外注費が原価に入るので、粗利は少なくなります。建設業では、売上原価のうち外注費が46.0%を占めています(粗利率の目安の記事で計算)。一人当たり売上高が高いのか、外注に出しているから高く見えるのかは、一人当たり粗利とあわせて見ると分かります。
クイズ:一人当たり売上高を比べてみよう
次の材料で考えます。
- 会社:町の工務店(総合工事業)。決算は3月
- 働いている人:社長1人、正社員6人、事務のパート1人
- 1年の売上:2億4,000万円
- 1年の粗利:4,320万円(粗利率18%)
- 大工仕事の多くを、協力業者に外注している
Q1. 一人当たり売上高と一人当たり粗利は? 総合工事業の平均(3,082万円・683万円)と比べると?
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働いている人は、パートも1人と数えて8人です。一人当たり売上高は2億4,000万円 ÷ 8人 = 3,000万円、一人当たり粗利は4,320万円 ÷ 8人 = 540万円です。
一人当たり売上高はほぼ平均並みですが、一人当たり粗利は平均より143万円低くなっています。決算月は、この計算には使いません。
Q2. 売上は平均並みなのに、粗利が平均より低いのはなぜ考えられる?
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大工仕事の多くを外注しているので、外注費が原価に入り、粗利が少なくなっていると考えられます。
少ない人数で売上を上げている分、一人当たり売上高は高めに出やすく、一人当たり粗利とあわせて見ないと、効率よく稼げているように見えてしまいます。
Q3. 社長が「パートは半日勤務だから0.5人と数えたい」と言った。その数え方で、調査の平均と比べてよい?
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0.5人と数えると7.5人になり、一人当たり売上高は3,200万円になります。
ただし、調査の従業者数はパートも1人と数えているので、平均と比べるときは8人で計算した3,000万円を使います。数え方をそろえないと、実際より良く見えます。
今週やること
- 前の期の売上と粗利を、期末の人数(パートも1人)で割って、一人当たり売上高と一人当たり粗利を出す
- 自社の業種と、同じくらいの人数の会社の平均と比べる
- 前の期、前々期と並べて、増えたか減ったかを見る
- 外注費が売上の何%かを確かめて、一人当たり粗利とあわせて見る
まとめ
- 一人当たり売上高は、1年の売上÷働いている人の数で計算する
- 中小企業(法人)の平均は一人当たり売上高2,469万円、一人当たり粗利623万円
- 卸売業8,041万円から宿泊業・飲食サービス業651万円まで業種で大きく違うが、粗利で比べると差は縮まる
- 調査の人数はパートも1人と数える。自社の数字も同じ数え方にそろえる
- 外注の多い会社は一人当たり売上高が高く出る。一人当たり粗利とあわせて見る
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