【必見】売上目標の正しい立て方

sales up plan

売上目標の正しい立て方を知りたいという声が増えてきました。事業年度の半ばも過ぎますと、そろそろ次年度の売上計画を立てないといけない時期に入ります。3月決算の会社ですと、秋口でしょうか。この記事を読むと、今までの方法とは異なった、正しい売上目標の立て方が分かります。

目次

売上目標の正しい立て方とは?

皆さんの会社ではどのように売上目標を立てているでしょうか。よく事業会社でありがちな例を見てみましょう。

売上高前年比110%

「今年度は新規の問合せも多いため、次年度もこの調子が続くはず!ではちょっと欲張って今年の売上の10%アップを見込もう。」

売上高前年比100%

「今年度は何もしなくてもいつものお客さんだから、いつものように受注できているな。だから来年度も同じくらいくるでしょ。来年度も、今年度とまったく同じ売上にしちゃえ。」

売上高前年比90%

「今年度はなぜかわからないけれども、受注の量が少しずつ減っているようだ。例年のような売上になるかどうか心配だから、ちょっとだけ売上目標を下げておこう。」

売上目標は要らない

「売上なんて、どうせ読めないから目標は立てない。目の前のお客さんのために一生懸命やれば、売上はついてくるはず。」

私の考え

このような例に当てはまっていませんか。私はどの考え方にも反対です。変化が激しい今の世の中で、今の数値だけを頼りにして何となく目標を決めてしまうことは危険です。また、目標は戦略と戦術を決めるうえで重要な指標になってきます。山の頂上を目指すときに「目の前の坂を一生懸命登っていれば頂上につくはず!」これは正しいでしょうか。行きたい頂上ではないちょっとした峠のてっぺんについてしまうかもしれません。計画を立てずに、しかも方位磁石を持たずに、山の中に入っていくような無謀な挑戦に思えます。

必要な売上目標は自動的に決まる

実は必要な売上目標は自動的に決まります。手順は以下の順で考えます。必要利益を把握すること。必ずかかる固定費を把握すること。売上点数によって変わる原価のような変動費を把握すること。計算式に入れること。以上で、売上目標は簡単に計算できます。その後、達成の可能性を照らし合わせることになりますが、必要な売上目標は自動的に決まります。これから詳しい方法を説明します。

必要利益を把握する

まずは来年度の必要な利益を把握しましょう。具体的な数値がないとイメージしにくいかもしれませんので、今回は例として1つの会社を想定します。赤字が続いている状況から、まずは黒字化を目指す段階の会社ということでイメージしていきます。

【設定】

・売上高:2億円

・売上原価:4千万円

・販売費及び一般管理費:1億7千万円

・営業利益:▲1千万円

・従業員:20名

・借入金残高:5千万円

正しい売上目標のための必要利益その1【借入金の返済】

借入金の返済については、毎月50万円など返済金額は決まっています。借入金の返済額は損益計算書で計画を立てる場合、数値として掲載されませんので注意が必要です。例として、毎月50万円、つまり1年分の600万円は返済分として必要利益に含めます。

正しい売上目標のための必要利益その2【社員への還元】

利益が出そうなときは社員への還元を実施する可能性があります。社員へどんな還元をするかを基に必要額を想定し、必要利益に含めます。今回は例として、黒字化達成のインセンティブ50万円とします。

正しい売上目標のための必要利益その3【借入金の利息の支払い】

借入金の利息の支払い額も決まっています。どのくらい支払っているかを確認し、必要利益に含めます。この記事では例として60万円とします。

正しい売上目標のための必要利益その4【税金の支払い】

利益が出そうな場合は、想定利益×法人税率※で計算します。前年度が赤字決算のときは、最低限支払いが必要な、法人税を今までの決算書で確認し必要利益に含めます。例として、前期赤字決算で、支払額18.5万円とします。

 ※法人税について

法人税の税率は、普通法人、一般社団法人等又は人格のない社団等については23.2%(資本金1億円以下の普通法人、一般社団法人等又は人格のない社団等の所得の金額のうち年800万円以下の金額については15%)とされています。  
法人税の税率は、国の税収の確保を目的として所得税等の他の税とのバランスを図りながら、その時々における財政事情や経済情勢等を反映して決定されています。

(出典:財務省ホームページ)

正しい売上目標のための必要利益その5【内部留保】

自己資本を充実させるために、内部留保をしたい場合は、希望金額分を必要利益に含めます。黒字化を目指していますので、今回は約250万円とします。

正しい売上目標のための必要利益その6【投資資金】

設備投資をするための資金が必要なときは、それも必要利益に含めます。苦しめの会社を例としていますので、今回は0万円とします。 

必要利益は社長の覚悟

以上が必要利益を把握する手順でした。必要利益には、社員への還元や、投資資金など、経営者の覚悟が表れます。今回の例では、必要利益の合計は978.5万円ですので、1,000万円を目標利益とします。

固定費を把握する

fixed cost

固定費とは

固定費は、売上点数や営業量に関わらず必ずかかる費用です。人件費(従業員の給与や福利厚生費)や地代家賃(テナント運営の場合の家賃)など、売上がゼロだとしてもかかる費用のことを指します。

人件費

人件費はその名の通り、従業員に支払う給与のことです。ここで注意したいのが、支払っている給与だけではなく、法定福利費(従業員の社会保険料の事業者負担分)、福利厚生費と役員報酬なども含めることです。損益計算書で確認します。

家賃

テナントで運営している会社の場合は月々の家賃を支払っていますので、こちらも固定費となります。

その他

その他の固定費ですが、ほとんどの会社では決算書の1つである損益計算書の「販売費及び一般管理費」はほとんどが固定費となります。水道光熱費などは一定ではなく、営業すればするほど費用が膨らむため変動費ではないかと思うかもしれませんが、準変動費や準固定費と言われ、一般の方にはわかりにくいため固定費として扱います。

今回の例では、販売費及び一般管理費を全て固定費で、1億7千万円とします。

変動費を把握する

変動費とは

変動費は、売上点数や営業量に比例してかかる費用です。10個売れたときと100個売れたときでは、仕入費用は変わってきます。このような費用を変動費といいます。

原価

上記で説明した仕入れ費用のことです。「製造原価報告書」に記載されている材料仕入高で確認します。

その他

主に「損益計算書の売上原価」や「製造原価報告書」の項目を確認します。自社の従業員ではなく、外注したときは外注加工費などで製造原価報告書に記載されています。販売点数が増えれば増えるほど外注が増えると考えますので、外注加工費も変動費として扱います。

今回は、売上原価を全て変動費で4千万円とします。

正しい売上目標を求めるために損益分岐点売上高の応用を使う

今までの金額がすべてそろえば、あとは損益分岐点売上高を求める計算式を利用してください。正しい売上目標の計算もその応用で算出できます。

損益分岐点売上高の求め方

【求め方の手順】

  1. 変動費率を求めます。※変動費率=変動費÷売上高
  2. 損益分岐点売上高を求めます。※損益分岐点売上高=固定費÷(1-変動費率)

【実際の計算】

  1. 4千万円÷2億円=0.2
  2. 1億7千万円÷(1-0.2)=2億1,250万円

損益分岐点売上高は2億1,250万円と求められました。

正しい売上目標の求め方

【求め方の手順】

  1. 変動費率を求めます。※変動費率=変動費÷売上高
  2. 目標売上高を求めます。※目標売上高=(固定費+目標利益)÷(1-変動費率)

【実際の計算】

  1. 4千万円÷2億円=0.2
  2. (1億7千万円+1千万円)÷(1-0.2)=2億2,500万円

目標売上高は、2億2,500万円と求められました。

売上目標を達成するために

目標売上高は、2億2,500万円と求められましたが、実際にその目標は達成可能なのかシミュレーションします。ここでいくつかの考え方を紹介します。

ここで売上高前年比の登場

今期の売上高は2億円で、目標売上高は2億2,500万円なので、売上12.5%アップです。それが達成可能なのかどうかを検討します。

売上の方程式の利用(その1)

【売上高=客数×客単価】

客数が12.5%増えるのであれば、目標売上高は達成可能です。あとは客数が増える施策を考えます。

売上の方程式の利用(その2)

【売上高=客数×客単価】

客数が増えないのであれば、客単価を12.5%増加できるか考えます。想定している顧客の買い上げ点数を増やし、一人当たりの客単価が12.5%上がる施策を考えます。

客数も客単価もどうにもならなそうであれば、目標売上高の計算式を利用します。変動費率と固定費が、計算結果に影響を与えていましたので、変動費率もしくは固定費を工夫します。

変動費の工夫

変動費率は、粗利率と近い考え方です。粗利の方が考えやすいと思いますが、粗利=売値-仕入れ値なので、売値を上げる(値上げ)か、仕入れ値を下げることで変動費率を下げることを考えます。仮に変動費率を0.2から0.15に下げられると、目標売上高は2億2,500万円から約2億1,180万円(前年売上比5.88%アップ)に下がります。約1,300万円下がるのは大きいですね。

固定費の工夫

または、固定費を削減することでも目標売上高は下がります。仮に、水道光熱費や交際費などを減らし、固定費を1億7,000万円から1億6,000万円に下げると、目標売上高は2億2,500万円から2億1,250万円(前年売上比6.25%アップ)に下がります。難しい話ですが、固定費は付加価値を高めるための支出になるため、固定費の削減は慎重になった方がよいです。このことについては別の記事で今後説明します。

まとめ

正しい売上目標は自動的に決まるという説明をしました。決算書があれば計算可能なのです。ただ、その目標にどう到達させるかが経営なので難しいですし、おもしろくもあるところです。戦略や戦術がとても大切になってきます。この記事に関しての質問、もしくは戦略や戦術について興味がある方は弊社にお問い合わせください。

中小企業診断士 仙台
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